―――― 薔薇ならば咲くでしょう 。
※お題恋人がドSなんですが~のキャラ相関図流用
「ああ。ユニ、あなたも今日ボンゴレに来ていましたか。これ、もしお読みになるようでしたら貰ってください」
久々に顔を見れた敬愛するおじさま方の一人に声を掛けられ、少女は花の綻ぶ様な笑みを浮かべた。
自分も……そして、彼らも特殊だ。
背負った宿命の為に、見上げる相手は祖母と同年代だというのに、母ほどの歳に見えた。
そして、彼は少女と目線を合わせる様に屈むと一冊の本を差し出す。
嵐のおしゃぶりに選ばれた青年が、やわらかに微笑む。
それを手に取る事を、躊躇する少女を安心させるように。
「え……でも、いいのですか。まだ新しい本なのでしょう?」
「ええ、もう用事は済みましたので……、ああすいません。女の子はもうこういったものはお持ちでしょうか。もしそうでしたら、綱吉くんか雲雀くんにでも差し上げて下さい」
「いいえ!あ、でもこれからお茶を御馳走になる約束なんです。一緒に見ますね?風おじさまも一緒に如何ですか?」
「申し訳ありません。私はこれから国に戻らなくてはならなくなってしまって。どうか、また誘ってください」
「はい!それでは、お元気で」
古い友人の孫娘。
その幼く、年相応に可愛らしい笑顔に見送られて彼……赤のアルコバレーノ、風はその場から静かに去った。
穏やかで、誰に対しても人当たりの良い柔和な彼。
しかし、その彼に対して見送る少女は少し、ほんの少し引っかかる所を覚えた。
「……少し、失敗してしまったかもしれません。気持ちを伝えるのは、やはり回りくどい手を使ってはいけませんね……」
そして、苦笑。
――――少し、そこだけは そこ だけは 見習いましょうか……。
ふう。と麗しい青年が見せるものとしては、あまりにも悩ましげな仕草。
勿論、原因の予測はつく。
きっと外してはいない。
彼女は、うーんと。その場で考える。手の上にある本にじっと見つめてみる。コレが悪いわけではないだろう、しかしきっとパンドラボックスだ。
今年、数えで十を少し過ぎた歳になった。
周りが、子供から一人前のレディーとして扱ってくれる事が少しだけ多くなって、嬉しい半面、少しだけ淋しかったし、年頃の悩みが出てきた頃。
けれど、まだまだ子供だ。
そっと、頭の中で思い出すと、今日お茶に招待してくれた兄と慕う青年も、たしか14の時にマフィアボスとなる、重い運命を受け入れたと聞いた。
―――大空の宿命って……
別に生まれを呪うわけではないけれど、責務云々の前に周りから掛けられる圧力あれやこれや、これは結構処理に困ってしまうのは致し方ないわけで。早く、祖母や、母の様に状況を愉しめる大人の女になりたいものだ。
話したら、彼のドン・ボンゴレはもしかして泣くだろうか……やっぱりそこは話さないでおこう。
「それで、さっき戴いたんです」
白いクロスの掛ったバルコニーにしつらえたテーブル。
そう大人数でもない今日の席にはお互いの距離が遠すぎる事が無いように、テーブルはそれほど大きくはない。
そこにのせられた、色とりどりの菓子が盛られた皿や、おそらく自分の好みを考慮してくれたのだろう、可愛らしい花柄や細工が美しいティーセットに気を付けながらユニは、先ほどであった風から貰った本を取りだした。
興味深そうにのぞきこんできたのは、今日の御茶会に呼んでくれたボンゴレ10代目。いや沢田綱吉。
「へえ。風さん、こんな本読んでるんだ」
「ええ・・・でもまだ新しいんです。もう要らないからとは仰ったんですけど、なんだか申し訳なくて」
「花言葉、ね」
受け取ってぺらぺらとそれを繰っているのは、同席していた雲雀恭弥。
知らされてはいなかった先客を、ユニは喜んだがあちらはどうだろうかと伺ってみた。
けれど、どうやら雲雀も3人での御茶に異を唱える事は無いらしい。
この男が他人、(そこからは沢田綱吉は当然に省かれる)とテーブルを同じくする事はそうそうある事ではない。
こうやって3人で他愛のない話を、しながら静かにお茶を飲む時間は密かな彼女の楽しみだ。いや話すのはユニか綱吉が圧倒的に多いが。どこかやさしい空気を纏う二人の間に入る事を許されているのが、嬉しい。ちょっぴり、優越感。
神出鬼没の霧の守護者(果物さんの方)がそっと教えてくれた『彼は小さき者とかわゆき者が並んでる姿を愛でるのは嫌いじゃないのですよくふふふ』
ただ、勿論。この二人がある意味怯えている事象を、ユニだけがどうにかできるという理由ももちろんあったりするのだけれども。
「紫陽花が移り気とか、紅い薔薇が愛とか情熱ならメジャーだから知ってるけど……こんなにあるんだね」
雲雀の手元を覗きこみながら、綱吉が感心したように呟いた。
女性なら些かでも興味の沸く事なのだが、やはり男性からしてみれば新鮮なのかもしれない。
「まあ!……昨日より今日、今日より明日、明日より明後日、毎日毎日違うあなたに心移って大変なの、だなんて。とても情熱的ですね」
「綱吉。子供の前だよ」
「ふふっ」
「ねえ、何いってんの?何言ってんの。ねえ、二人とも?」
もう少し初々しい反応でもすればいいのに、温い目をするなんて面白くないなと二人が思っている事なんて綱吉はお見通しである。
満足そうにカップを傾ける雲雀と、ほんのり染めた頬に手を当てて照れているユニ。
しかし、この光景はなんだ?
「こら。お前ら純粋な子供の目の前で不純同性交友してんじゃねーぞ」
なんとなく、予感があった。
おそらく、三者三様に。
赤のアルコバレーノが先を急ぐように、この国から飛びだして行ったと聞いた時から。
招かれざる客である。
沢田綱吉の元家庭教師が、長い脚を持て余し気味にバルコニーの入口に立っていた。この男の扱いに困っているので、二人はユニをこの場にとどめたいのだ。彼女だけが、このリボーン大先生をどうにか出来るのである――。………時々焚きつけたりもするけど(彼女はまさしく、祖母ルーチェの血を引いていると、ぽつりと風が昔零した)
今日、この邸に彼と、そして先ほど邸を辞した彼の人がブッキングしたのをしっていたので。
「リボーンおじさま。お二人はとっても純粋だと思いますよ?不純じゃないですよ」
「純粋ね・・・・その歳か?ふん。甲斐性無しが」
「…………」
「…………や、そ…ううんなんでも」
始終にこにこ笑うユニは、確かに大物なのだろう。
そっくりそのままお前に返す。
そう言えたなら、どれだけいいか。
「それで、リボーンどうしたの?」
「どうしたって…。茶くらい勧められねーのか、この馬鹿弟子」
「今お淹れしますね。あ、エスプレッソの方がお好みですか?――所で、おじさま手に持っていらっしゃるのは」
すたすたとテーブルまで歩いてきたリボーン。そっと戦線離脱を試みようとする雲雀の腿をギュッと抓ってから、しょうがないから椅子をもう一客用意させようと立ち上がりかけた綱吉も、少女の声に彼の手元をみた。
「あ。……お前それ、フゥ太が育ててたきゅうりの花じゃないだろうな!!」
まだ学生の彼は、時折理科の何某かに使う植物を栽培していたりする。
まさかリボーンがそんな事をする理由も沸かないが、このボンゴレ邸で目にするにはそぐわなさ過ぎた。
派手な事が好きそうな元家庭教師の手に、小さな小さな黄色い花。
一応いくつか束ねて、白く細いリボンが巻かれていた。キラキラと光る白、光沢をもっているのはサテンだろうか、シルクだろうか。とりあえず、リボンだけが眩しい。小さな花の花弁は5つ、花からすると太めな茎には触ったらチクチクしそうな毛が……なんとなく実がなりそうな予感がひしひしとする。いくら都会っ子の現代っ子といってもそこはかとなく、見た事のある瓜科・・・・。
地味だ。
やたらと地味だ。
明らかに鑑賞用ではない。
「聞きたいか?聞きたいのか」
貰った――。俺に渡すために手ずから栽培したらしい。いじらしいな
やたらと春めいた高笑いが聞こえる。
「…………」
「……」
「…………そう…っか」
手に持っている花よりも、ゴージャスかつ鮮やかな花々が先生の背後で咲き誇る。
誰から?
などとは聞かない。花一つでリボーンのご機嫌メーターがぶっ壊れるほど揺さぶれる相手など一人しかいなかった。
栽培って……もしかしなくても、ボンゴレの庭だろうか?
何、家主の知らないところで庭耕してくれちゃってるんですか!!と思いつつ、記憶を探ると、フゥ太が庭の隅に観察用の野菜を植えていいかと聞きに来た時、確かその作業を風が手伝っていたとか何とか聞いた覚えが、ある。
なんだっただろう、あの時彼らは何を植えたのだろう。
実がなったら、一緒に食べようとかなんとか―――。
幸せそうな、やたら、鬱陶しいまでのオーラをまき散らして自分の世界に酔いしれるリボーン。
だが、3人ともかける言葉がない。
いつの間にか気が付いたら、猛る想いをやたらと風にぶつけ倒すリボーンが、いた。
何がどうしてそうなったか分からないが、恋とは不思議なものなのである。
風が、リボーンをどう思っているのか?まんざらでも無いんじゃないだろうか、と言うにはなんだか、なんだかなぁ…な対応を見ている。
手も握らせてもらったことが、たぶんリボーンさんには無い。
嫌われては……いないようだけれども。
弄んで――というと、泣けてくる。
弄ばれるリボーン先生?まさかの。いやいや、これが腹の中真っ暗で真っ黒な風さんの愛の在り方なんだと、納得。
ああ、だってほらぐるぐるしてる姿が可愛いって言ってた!!
とんだドSですよね!
とんだドMだからしょうがないですよね!!!(信じたいくないがリボーンが)
正直、つれなくされてる姿がすごく愉しそうなのだから救いようが無いと思う。
弟子としては気付きたく無かったが、気付いてしまったらもう忘れられなかった。そしていつの間にか雲雀もその輪に巻き込まれ、どうしたことか可哀想に大好きなおじさまのそんな姿を見ることになったユニ。これが、母子に継がれたと思うと泣けてくる。彼女の母もまた、偉大だったに違いない。
喜ぶべきだろうか、積年の片想い。漸くせんせにも春ですか?春が来ましたね、春すてき!!
しかし喜ぶには、あまりにも、あまりにも、地味だ―――。
何かあるような気がしてならない。
とっても満足そうに、胸を逸らすと花を胸ポケットに挿して彼は言った。
「まあ、たまには俺の惚気でも…」
「ねえ、リボーン。行ったら?」
腰を据えるべく、給仕の者に椅子を持ってくるように手を上げたリボーンを、珍しい事に雲雀が遮った。
「……いけると、思うか?」
「珍しいね。君が弱気なんて、君次第じゃないか――」
「そう、だな。俺もヤキガまわっちまったな」
なんとなく、この場面で無かったらかっこいいセリフだった気がしないでもないのが、残念で仕方が無い。いやそもそも、最近の先生が残念だから仕方が無いか……。
じゃなくて!
「ちょっと、恭弥さん。どうするんですか?」
「さあ、間に合わなくたって僕のせいじゃないじゃないか」
「そうじゃなくて!風さんが邸出て、まだ30分ほどですよ、空港なんかでリボーンに見つかりでもしたら!!」
「知らない」
「っちょ―――」
「ああ、もしかしてあの人と闘えるのかな。本気で殺しに来てくれたら、愉しいのに」
「あ、そう・・・ですか」
そう。忘れがち(このサイトにおいて)だが雲雀は戦闘狂だ。
相手が、あの風ならばなんの文句も無く嬉々として戦いたいだろう。彼は、アルコバレーノ選ばれた最強の7人、あのリボーンですら一度も組み敷けない男。………と言うとなにか物哀しい。
「なんで、リボーンおじさまにあんな花束なんて……」
一人焦る綱吉の横で、ユニが呟く。
彼女をして、『あんな』と言わしめるのだから相当である。
斜め方向の感想をもった大人を置いて、彼女は彼女で別れ際風が呟いた言葉が気になっていた。
『失敗してしまったかもしれません』
かもしれません。ではなく、明らかに失敗なのだが如何せん理由が分からない。
むうと眉を寄せる少女。綱吉は、あまり気にせずお菓子でもお食べと肩に手を置く。
コクリと頷いた所に、トントンと雲雀がテーブルを指で叩いた。
綱吉と二人指された場所を覗きこむ。そこには、先ほどかの風がユニに渡した本が開かれている。先ほどまでは気が付かなかったが、細い附箋が一枚付けてある。
「なん、です…………」
「きゅうりじゃ、ありませんでしたね」
「いや、それ。朗らかに笑って言う事じゃないよね?」
「間引いた花……か」
「分かってますから、哀しい事言わないで!!」
「こ、この本はおじさまに渡した方がよか……」
「ちょっと待って。考えよう、ね。よく考えようユニ!!」
スイカ・すいか・西瓜
花言葉 : 『かさばったもの』
あなたの愛は、私には大きすぎるわ
あなたの想い、扱いが分からないの
あなたの全て、置き場所に困ってるんだけど
ほんとうに、これ収納する場所が無いんですよ
「いや……ねえ、別に嫌いとか、憎しみとか、そんな事言われてるわけじゃ……」
「もうちょっとコンパクトになると、持ち運んでもいいってことですもの!」
「大空はどうしてそんなに、ポジティブなんだろうね…………わかった、わかったらそんな冷や汗流して縋る目で僕を見ないで」
―――――――― 少し失敗しただって? 伝わるわけないじゃないか!!
納まりが悪いのでぶった切ってすいません。
リボーンファン、風ファンの皆さま大変申し訳ありません。
ほんとの、別に要らないマメ知識ですが知ってしまったら、なんだか止まりませんでした orz
因みに、きゅうりは『洒落』だそうです……それもなんだかね